歯周組織再生療法について
2023/12/01
「歯周病で歯が抜けてしまった」「歯茎が下がって、歯がグラグラする」といった悩みをお持ちではありませんか?
歯周病は、歯と歯茎の間にある歯周組織が破壊されていく病気です。歯周病が進行すると、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病で失った歯を再生する治療法として、歯周組織再生療法があります。歯周組織再生療法は、歯周組織を再生することで、歯を失わずに済む可能性がある治療法です。
そこで今回は、歯周組織再生療法について詳しく解説します。
目次
1. 歯周組織再生療法とは何か?
2. 歯周病の進行と歯周組織の破壊
3. 歯周組織再生療法の目的と利点
4. 歯周組織再生療法の主な手法
5. 歯周組織再生療法の手順と治療の流れ
6. 歯周組織再生療法の成功率と予後
1. 歯周組織再生療法とは?
歯周組織再生療法は、歯周病で失われた歯周組織を、人工の材料や組織を移植するなどして再生させる治療法です。
歯周組織には、歯を支える骨(歯槽骨)、歯肉、歯根膜、セメント質の4つの部分があります。歯周組織再生療法では、これらの組織のいずれか、または複数の組織を再生させます。
2. 歯周病の進行と歯周組織の破壊
歯周病の進行は、以下の段階に分けられます。
1. 歯肉炎
歯肉炎は、歯周病の初期段階です。歯垢や歯石が歯の表面に付着し、歯茎に炎症が起こります。歯肉炎の症状としては、歯磨き時に歯茎から出血する、歯肉が赤く腫れる、歯周ポケット(歯と歯茎の間にできる溝)が深くなるなどが挙げられます。
2. 軽度歯周炎
歯周病の初期段階である歯肉炎が進行し、歯周組織に炎症が広がった状態です。
軽度歯周炎の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 歯磨き時に歯茎から出血する
- 歯肉が赤く腫れる
- 歯周ポケットが深くなる
歯周ポケットとは、歯と歯茎の間にできる溝のことです。歯周炎が進行すると、歯垢や歯石が溜まりやすくなり、歯周ポケットが深くなっていきます。歯周ポケットが深くなると、歯周病菌が歯周組織に侵入しやすくなるため、歯周病の進行が加速します。
軽度歯周炎は、適切な治療によって、歯周病の進行を抑制することができます。
3.中等度歯周炎
軽度歯周炎から進行した状態であり、歯周病菌の繁殖が進み、歯槽骨や歯根膜の破壊がさらに進みます。
中等度歯周炎の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 歯磨き時に歯茎から出血する
- 歯肉が赤く腫れて、硬くなる
- 歯周ポケットが深くなり、歯根が露出し始める
- 歯がぐらつきがひどくなる
- 口臭がひどくなる
中等度歯周炎の治療としては、歯石除去や歯周ポケットの洗浄などの非外科的治療に加えて、歯肉の切開や縫合などの外科的治療が必要な場合もあります。これらの治療によって、歯周病菌の繁殖を抑制し、歯周組織の炎症を抑え、歯周ポケットを深くならないようにすることができます。
4.重度歯周炎
中等度歯周炎から進行した状態であり、歯周病菌の繁殖がさらに進み、歯槽骨や歯根膜の破壊が著しく進行します。
重度歯周炎の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 歯磨き時に歯茎から出血する
- 歯肉が赤く腫れる
- 歯周ポケットが深くなる
- 歯がぐらつきがひどくなる
- 口臭がひどくなる
- 歯の根元が見えてくる
- 歯が動く
- 歯が抜け落ちる
重度歯周炎の治療としては、歯石除去や歯周ポケットの洗浄などの非外科的治療に加えて、歯周外科治療が必要になるケースもあります。歯周外科治療では、歯周ポケットを深部まで洗浄し、歯周組織の再生を促すための処置を行います。
3. 歯周組織再生療法の目的と利点
歯周組織再生療法の主な目的は、歯周病によって破壊された歯の周囲の組織の機能を回復させることです。 歯周病は、歯を固定している骨や歯茎などの組織に炎症を起こし、これが進行すると最終的には歯の喪失につながることがあります。
歯周組織再生療法の目的は、以下のとおりです。
- 歯周病で失われた歯周組織を再生する
- 歯のぐらつきや動揺を抑制する
- 歯の寿命を延ばす
歯周組織再生療法の利点
- 歯の喪失防止: 歯周病の進行を止める、歯を失わずに済む可能性がある
- 痛みの軽減と快適さの向上: 治療によって歯肉の健康が回復すると、歯周病による痛みや不快感が軽減されます。
- 全身の健康への貢献: 口腔の健康は全身の健康に影響します。
4. 歯周組織再生療法の主な手法
主な手法
- 組織誘導再生(GTR)法: GTR法は、特別に設計された膜を使用して、新しい骨組織の再生を促す方法。この膜は、不要な組織が成長するのを待ちながら、必要な組織の成長を促進します。
- 骨移植: 骨移植は、歯を支える骨が失われた場合に用いられる手法です。患者自身の他の部位から骨を採取するか、合成材料やドナーの骨を骨が吸収している部位に入れる方法。
- 再生を促す薬剤を用いる方法:特定の薬剤や生物学的物質を使用して、自然な組織の再生を促進します。エムドゲインやリグロスを用います。
- 軟組織移植: 歯肉の組織が退縮した場合に用いられる手法で、新しい歯肉組織を作るために患者自身の口内の他の部位から組織を移植します。
5. 歯周組織再生療法の手順と治療の流れ
1. 歯周病基本治療
歯周組織再生療法を行う前に、まず歯周病基本治療を行います。歯石や歯垢(プラーク)を除去して、歯周病菌の繁殖を抑制します。
2. 歯周ポケットの深度測定やエックス線写真撮影
歯周ポケットの深度の測定やエックス線写真などから総合的に歯周組織再生療法の適応症かどうかを判断します。
3. 手術の説明と同意書の取得
歯周組織再生療法の手術内容やリスクについて説明を受け、同意書に記入します。
4. 麻酔
手術部位に局所麻酔をします。
5. 手術
歯と歯肉の間にある歯周ポケットを切開して、歯周組織を露出させます。歯根面に付着している歯石や炎症性の組織を除去し骨移植やGTR膜の設置、エムドゲインやリグロスなどの塗布を行います。
6. 縫合
手術部位を縫合します。
7. 術後の処置
術後は、抗生物質や鎮痛薬の服用や、うがい薬の使用などの処置を行います。
8. 経過観察
術後の経過を観察し、必要に応じて治療を行います。
歯周組織再生療法の治療期間
歯周組織再生療法の治療期間は、治療法や歯周病の進行度合いによって異なります。
6. 歯周組織再生療法の成功率と予後
歯周組織再生療法の成功率
歯周組織再生療法の成功率は、歯周病の進行度合いや歯の状態によって異なります。骨壁数が多い場合や、歯周組織の再生範囲が狭い場合は、成功率が高いと言われています。骨壁が少ない場合や、歯周組織の再生範囲が広い場合は、成功率が低くなる可能性があります。
また、歯周組織再生療法の成功には、患者さんの協力も重要です。術後の口腔衛生をきちんと行うことで、成功率を高めることができます。患者さんの年齢や喫煙習慣なども、成功率に影響すると考えられています。
歯周組織再生療法の予後は、成功率と同様、歯周病の進行度合いや歯の状態によって異なります。
一般的には、治療後1年程度で、歯周ポケットの深さが減少し、歯がぐらつきにくくなるなどの効果が期待できます。
歯周ポケットが浅い場合や、歯周組織の再生範囲が狭い場合は、予後も良好と考えられます。歯周ポケットが深い場合や、歯周組織の再生範囲が広い場合は、予後も不良になる可能性があります。
歯周組織再生療法の成功率と予後を高める方法
歯周組織再生療法の成功率と予後を高めるためには、以下のことに注意しましょう。
- 歯周病の治療を徹底する
歯周病の治療を徹底することで、歯周病菌の繁殖を抑制し、歯周組織の再生を促すことができます。
- 適切な治療法を選択する
歯周病の進行度合いや歯の状態によって、適切な治療法は異なります。歯周病の専門医に相談して、適切な治療法を選択しましょう。
- 術後のケアをしっかり行う
治療後の歯周ケアの状態によっても異なります。歯周ケアをきちんと行うことで、歯周組織の再生を維持し、歯の寿命を延ばすことができます。
歯周組織再生療法は、歯を失わずに済む可能性がある治療法です。しかし、治療には時間がかかる可能性があるため、注意が必要です。
歯周組織再生療法を受ける場合は、歯周病の進行度合いや歯の状態などを考慮して、適切な治療法を選択することが大切です。